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ぬるい氷

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木の子

記憶の中の空は古くなって黄ばんだ紙のような色をしている
雲一つないのに太陽もないものだから
太陽は水で伸ばされて空に塗込められてしまったように思える

遠く平坦な山の頂に面白い形の木が同じ間隔で生えているのを眺めている
木に見えるがあれは木の子であることを知っていて僕は一度そこにもたれて午睡にかまけたことを思い出した
木の子の軸は柔らかいクッションのようで僕がもたれかかると優しく反発した
目が覚めるとそこには僕の形にくぼみができていてしばらく眺めていたけれどすっかり元に戻ることはなかった
ここから見て左端から4番目がそれだったはずだ
記憶をたどって僕がその山の頂に登るとより凛々しい姿で木の子の尖塔の群れが屹立していた
4番目はすっかり元通りになってしまっていた
再びそこにもたれかかるとすぐに眠気に誘われた
どんな夢を見たのかは覚えていないが目覚めると自己嫌悪に陥った
ひどく卑猥な夢だったのかもしれない
頭に浮かんだのは真っ赤なスイカの果実とそこに埋まった無数の黒い種
それがとんでもなくグロテスクなものに感じられた
僕は僕がもう一度作ってしまったくぼみを眺めていた
記憶の中と同じようにそれがすぐに元通りになることは無かったがいつかは元通りになるのだろう
くぼみに手を差し込むと繊維がまとわりついた
それはさらさらとしていて心地よい絡み付き方だった
両手でくぼみをさらに広げると赤ん坊の鳴き声がした
繊維をかき分けていくと真っ白い赤ん坊の姿が見えたので両手で抱え上げた
赤ん坊は泣き止んで自分から地面に降りて土の中へもぐっていった
僕は何か取り返しのつかないことをしてしまったのかもしれない
見上げると木の子の傘の部分からおびただしい数の胞子が降り注いだ

僕は僕のくぼみの中にもう一度収まる
そして記憶を辿る
黄色がかった空はもうなく暗闇しか見えない
山の頂きにある木の子だけが光輝く胞子を飛ばしている
comments(0)|trackback(0)|書き物|2013-06-03_21:32|page top

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