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ぬるい氷

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おばさん

私がおばさんという言葉を初めて意識したのは大学生になった時だった
それまではもちろん女子高生で
それは社会に与えられた特権階級のようなものだと思っていた
何もしなくてもただ制服を着て学校に通うことがステータスだった
社会というより一部の大人が勝手に作った幻想だけれど
私はその立場を余す事無く享受していた

大学生になって同級生が「もうおばさんだからね」と呟いた
私は「そうだね」と言ってふふと笑った
でも自虐的になってみただけで本当は自分のことをおばさんだなんて思っていなかった
大学では単位を落とさなかったしサークルにも入っていたしたくさんバイトもしたし恋人もいた
充実した大学生活だったと思う
特にしたいことはなかったけれど周りの子たちと同じように就職活動を行い
仕事に就くことができた
卒業式の日に同級生が「学生生活も終わりっ!これでうちら本当におばさんだね」としみじみ言った
私は本当にそうだなあと思った
そしてその時心に小さなトゲが刺さった気がしたのを今でも覚えている

就職してから数年は仕事を覚えるのに必死だった
その頃から結婚式の案内が届くようになった
友だちに会っても誰々が結婚するというような話題が増えた
わたしは結婚式には一度も行かなかった
祝福したくなかったわけじゃない
でも行ってしまうと現実を突きつけられそうで怖かった
結婚 育児 パート もうおばさんまっしぐらじゃない
どこかで私はまだ違うって思いたかったんだと思う

友だちと会う機会はどんどん減っていった
たまに会えばみんな子育てや旦那の話をした
「四捨五入すればもう30だよ アラサーだ」
と笑って言う友だちと一緒に私は笑えなかった
どこかで「まだわたしは・・・」と思っていたからだ

読んでいる雑誌の読者層にもう自分の年齢がはみ出してしまっていることを知りつつも
その雑誌の読者を続けた
たまに会う友だちに「あんただけは変わらないね」とか
初めて会う人に実年齢を言うと「まだ学生だと思いました」と言われるのが嬉しかった
私は必死に迫ってくるおばさんに対抗していたんだ
けれど30になるのに四捨五入を必要としなくなった時に
私は自分には何もないことを知った
人に誇れるものが何一つない自分に気がついた
教養も知性も品も特技もコネも何一つ

焦った
何かしなくちゃと思った
明日から始めよう
明日から変わろう
資格を取ろう
本を読まなきゃ
語学の勉強をしよう
いろんな人に出会おう
そう思って日々を過ごした
けれどその明日は永遠にやってこない明日だった

お風呂上がりに鏡の前に立った
今まで目をつぶってきたけれど
垂れるところは垂れているし
必要のないところに肉はついているし
皺も刻まれている

その姿を見ていると哀しくなって
私は裸のまま泣いた
そしてベッドの中で泣き続けた
一晩中ずっと

翌日の朝もう一度鏡を見ると
ひどい顔の私がいた
目は真っ赤ではれている
顔もむくんでいる
その顔を見ていると笑いがこみ上げてきた

この哀れな顔はまぎれもなく私
他人も社会も救ってくれない
救ってあげられるのは私だけ

私は鏡に向かってごめんねと言った
鏡の中の顔は微笑んだ

私はおばさんだ
紛れもなく正真正銘のおばさんだ
けれどただのおばさんじゃない
絶対かっこいいおばさんになってやる

それは明日からじゃない
今日から始まるの
comments(0)|trackback(0)|書き物|2013-01-24_21:44|page top

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