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商店街のアーケードを歩いていると 途中でアーケードが切れて空がのぞく場所がある それは200メートルほど続くのだが 昔はそこにも天蓋があったように思う
天蓋が切れ空がのぞくと自分が思っていた天気と異なっていて驚くことがしばしばある アーケードの中では天気が分からないので曇りだと錯覚してしまうのだ 人工の光と大陽を遮る天蓋とが僕に曇りを想像させた
その日もやはり灰色の空を感じながら僕はアーケードを歩いていた 歩き続けていると向こうから小走りで走ってくる人に出くわす どうも雨が降ってきたらしい 空が見えるところまで来ると 人だかりができていた 雨が止むのを待っている人や 走っていこうか悩んでいるであろう人たちだ
200メートル先にも同様に人だかりがあった しばらく待っても雨が止む気配はない 向こうから一人走ってこちらへ来た人がいた その様子を見て向こうに行こうかどうか迷っていた人たちは完全に選択肢を一つに絞ったように感じられた
さらに待ち続けていると 後ろの方から「通してください」という女性の声が聞こえた 人だかりをかき分け 一人の女性が僕の横を通り過ぎ そして雨の中を歩いて行った 女性は小走りでもなければ手で雨を防ぐ様子もなく 全く堂々としていたが 背中にこう貼り紙が貼ってあった 『雨に濡れると溶けてしまいます』
その貼り紙には誰もが気付いたであろうが何か行動を起こそうというものは誰もいなかった もしかしたら何か起こるのかもしれないと期待していた人もいたのかもしれない
女性が100メートルほど歩いたところで 僕は駆け出していた 自分の持っているバッグを女性の頭にかかげ 「背中に貼り紙が・・・」と言うと 女性は「知っているのありがとう」と言って その場に溶けてなくなってしまった
しばしその場に呆然となったが 僕は走って向こう側へたどり着いた
濡れた僕の体を見るや人だかりの中に道はすぐに出来た 「ひどい雨の中あんな途中で止まって何をしていたんだい?」 おばあさんが僕に話しかけてきた そしてこれをお使いとハンカチを渡してくれた 僕はハンカチで顔をぬぐって汚れてしまったそれをどうしようかと考えていると おばあさんは持っていきなさいと言ってくれた 丁寧にお礼を行ってその場を去ろうとした時に おばあさんが僕を呼び止めた 「こんなことする子がいるのね」 それから僕の背中に手を回し 僕の目の前に一枚の紙を差し出した
「これはどういう意味なのでしょうね?」
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